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不器用なふたり 預かりもの

Penulis: 相沢蒼依
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-16 05:33:58

橋本のハイヤーを使ってるお客様から――正確にはそのお客様の知人から、変なものを預かった。

パッと見はただの黒い手帳で、開かないように大きな鍵がつけられていた。しかも見た目はただの手帳なのに、中に何が入っているのか分からないくらい、異常に重たいものだった。

お客様の話によれば持ち歩ける金庫になっているそうで、大型トラックが踏んでも潰れない上に、炎の中に投げ込んでも燃えたりしないらしい。

そんな異質なものを、1週間も預かれという。

(藤田さんはトラブルに巻き込まれたことがないと言っていたが、きな臭さを感じさせる物を傍に置きたくはない――)

そう思わせる理由のひとつは、お客様の知人の職業にヤがつくせいだ。もしくは暴でも可。性格も相当イカれているのは、ちょっとの間ソイツをハイヤーに乗せたことで分かった。

もうひとつの理由は『中身は知らないほうがいい。じゃないと、ヤクザと警察の両方に狙われる』という言葉を、藤田の口からきいたせいだった。

「木を隠すなら森の中、ヤバいものを隠すなら、同等のレベルでヤバいものの中に紛らせたら大丈夫だろ」

ハイヤーの中で、こそっと呟いたひとりごと。最後
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    「へぇ! 橋本さんが宮本さんと一緒に暮らすマンション探しに、そこまで苦労していたなんて。もっと早く、相談してくれたら良かったのに」 橋本がハンドルを握るハイヤーの車中で、仕方なくこぼした言葉を聞いた榊は、ここぞとばかりに満面の笑みを浮かべた。「俺としては、恭介が住んでるマンションに住みたいところなんだけどさ」「ですよね。行きも帰りも一緒なら、お互い楽ですし」「残念なことに、雅輝のデコトラを駐車するところがないんだ」「あ~、確かに……。近場には見当たりませんね、うんうん」 いつもより反応が淡白な榊の返答に違和感を覚えた橋本が、ルームミラーで背後を見ると、熱心にスマホを弄っている姿が目に留まった。「おまえ、もしかして地図で探してくれてる?」「それは10秒前に済んでます。今は駐車場を管理していそうな、顧客に目星をつけてるところで……。チェックするお客様は、わりと限られる感じです。橋本さんの力になることができたらいいんですけど」(仕事早っ。俺が頼む前に、恭介自ら動きだしちまうなんて)「恭介、サンキューな。自分の手で探したかったのに、さっぱり上手くいかなくて」「俺としては橋本さんの行動力に、結構驚いているところですよ」「何か変なところでもあるのか?」 目の前の信号が、タイミングよく赤になった。橋本は振り返って榊を見つめたら、胸ポケットにスマホをしまうところだった。「宮本さんと進展するまで、うだうだして時間をかけているのを見ていたから、付き合いも慎重にいくかと思っていたんです。同居するマンション探しに奔走する、橋本さんが意外だなぁって」「それはただ単に、行き来するのが面倒になっただけだ。それ以上も以下もない」 眉間に皺を寄せた橋本に、榊は口元に意味深な笑みを湛えた。「またまたぁ、そんな心にもないこと言って。宮本さんを、ひとりじめしたいだけなんでしょ?」 厄介なやり取りになる前にと橋本は慌てて前を見据え、信号が変わるのを待った。

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    「ったく……。雅輝のせいだっていうのに」 橋本がチラシを真剣に眺めて検討していると、隣にいる宮本の太い二の腕が腰に回される。『何か掘り出し物でもありましたか?』 顔を寄せてきたと思ったら、頬にキスを落とす。「真面目に探せって。この物件良さげなんだけどさ、青空駐車場が歩いて30分くらいかかる場所なんだ」『俺は別にかまいませんよ』「駄目だ。疲れた躰を引きずって、30分も歩かせるわけにはいかない。絶対に次の日に響いちまうだろ」 トラック運転手の仕事のつらさを知っているからこそ、宮本の躰を考えて探していた。それなのに――。『俺ってば陽さんに超愛されてますね、嬉しいなぁ』 橋本が持っているチラシを奪取し、がばっと抱きついて頬擦りしてくる。「ぉ、おい!」『陽さんに愛を返したいです。いいでしょ?』 反論を防ぐような笑みや、行為を断れないような潤んだまなざしに、橋本は簡単に押し倒されてしまったのだった。(縋ってくる感じの捨てられた子犬みたいな目は、絶対に反則だろ) しかもそれを無意識に発動させて、抵抗する橋本の動きを止めるあたり、天才的だと思わずにはいられない。 年上で腕力を伴うことなら橋本が絶対的に上なのに、それを易々と無力化する宮本の能力の恐ろしさを、改めて思い知った。「大好きな雅輝に殴る蹴るなんてことは、俺にはありえないしな。参った……」 参ったついでに、引越しのことを第三者に相談してみようと考えた。 一番手っ取り早い人物、それは――。

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